皆さん、今年も残すところ2週間ほどになってしまいました。年末は明るい話題にしたいなぁということで、今回は珍しくハラハラしない、フムフムな内容でいきたいと思います。
三愛眼科は前院長の時代、遡ること20年近く前から『
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』に取り組んでおりますがこの度、ジョンソン・エンド・ジョンソン社(以下J J社)から依頼を受けまして、来年4月に全国発売となる新型多焦点眼内レンズ『
Synergy®︎』の早期臨床評価施設として、今月からテスト使用させていただくことになりました。
今までの私のスタンスは、ヨーロッパや日本国内で豊富に実績を重ねて厚生労働省が正式に承認し、なおかつ私が信頼する眼科医たちが使用したデータを聞き込み調査し、患者様の術後に問題が無かった多焦点眼内レンズだけをようやく採用して使う、を徹底していました。しかし今回は、他の眼科医よりも先行して使用するという、下手をすると患者様にご迷惑がかかるかも知れない大役を進んで受けました。
(なぜですか?)既に実績のある2種類の多焦点眼内レンズを配合した製品だからです。
ここから少し難しい話になりますので、眠たくなったら次回コラム『
最新型の多焦点眼内レンズを厳しく評価してみる 第1号患者様の声!』を楽しみにしていただいて、温かくして寝てください。
現在、日本で承認を受けている多焦点眼内レンズの種類は、大まかな見え方の評価も添えまして以下のように分けられます。
- ①2焦点レンズ・・・・・遠方◎ 中間△ パソコン△〜◎ スマホ×〜◎
- ②焦点拡張型レンズ・・・遠方○ 中間○ パソコン○ スマホ×
- ③3焦点レンズ・・・・・遠方◎ 中間○ パソコン○〜◎ スマホ○〜◎
* “ 〜 ”が入っているのは、個人差やレンズの種類によるものです
* 眼科的に『遠方』は5m距離、『中間』は1m距離です。ここ、要注意です!
(先生!③の
3焦点レンズ、むちゃくちゃ優秀じゃないですか!もう十分でしょう?)
と思われた方はほとんど正解、85点差し上げます。ただ、眼内レンズというものはただ単に視力が出れば良いのではなくてですね、いくつかの要素をクリアして初めて一人前なんです。
『
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』にご興味のある方は既によくご存知だとは思いますが、その考えるべき要素というのは、
- #夜間の見え方(コントラスト感度)
- #変な眩しさ(ハロー・グレア)
です。『
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』を検討中の方々の中には、色んなインターネット記事を見ては、『ハロー・グレア』という下手くそな英語の挨拶みたいに聞こえるよく分からない症状が不安で、手術に踏み出せない方も多いと思います。この要素について私なりの考えがあるので、続きを読んで下さい。
『夜間の見え方』については、そもそも白内障にかかっている時点で十分悪くなっていますので、手術後の方が良くなる人の方が多いと思います。半分開き直りましょう。
『ハロー・グレア』については、賢い眼科医様からの批判を覚悟で男らしくまとめますと、見え方に◎が多いレンズほど『ハロー・グレア』が出やすい、『
と予想される』で良いと思います。従来のレンズに当てはめて理論的かつ強引に評価するなら、
- ☆3焦点レンズ・・・・・昼間は良く見える、夜間は車の運転がしにくいかも
- ☆焦点拡張型レンズ・・・昼間も夜間もそこそこ見える、夜間の運転はしやすい
『
と予想される』ことになります。
内容が難しいですね、ゴメンなさい。ここで休憩・・・
三愛眼科を守るシーサーを作って下さった職人さんが、とある人に依頼されて制作中の作品です。
さて話を戻します。『
と予想される』というフレーズ、かなり気になりますよね。当院に『
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』の話を聞きに来られる患者様には、もちろんこれらの『
と予想される』デメリットについて時間をかけてご説明するようにしておりますが、実は術後にこれら多焦点レンズからくるデメリットを症状として相談される方はほとんどおられません。私が記憶している範囲では5年ほど前に1人だけおられましたが、その方もそもそも白内障症状に悩まされていましたので、単焦点レンズへの交換手術を行なって十分な視力が出た後は、ご機嫌に過ごしておられました。
また、私は手術指導のため各地の眼科クリニック、病院に赴き『
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』に触れることがありますが、出張先の院長たちからも、やはり多焦点レンズによるトラブルで困っているとは聞きません。
(*またまた余談ですが、私が他院から手術指導の依頼をお受けする時、院長先生が患者様を大事にしているなぁと思える院だけを選ぶようにしています。ドクターやスタッフの思いがしっかりしているからこそ、トラブルが少ないのかも知れません。)
しかし『
と予想される』ではなく、世の中には実際に症状として困っている患者様がいらっしゃるのも事実ですので、大変な道のりと知りつつ、医療に携わる者として手術成功率100%、患者満足度100%を目指すべし、ということでほとんど合格に近い多焦点レンズであっても進化しないといけないわけです。目指すのは、
- #どこもかしこも良く見えて
- #夜間でも見え方が落ちず
- #変な眩しさのない
- #お手頃な多焦点眼内レンズ
ということになります。今回三愛眼科に早期臨床評価依頼のあったJ J社の新型多焦点眼内レンズはこれら至高の目標に近づけるレンズではないかと思い、依頼を受ける判断をしたわけです。
さぁようやく今回のコラムの肝に参りたいと思いますが、なんとなんと・・・お時間となってしまいました。絶対に今年中に次回コラム『
最新型の多焦点眼内レンズを厳しく評価してみる 第1号患者様の声!』を書きます。忙しくて・・・言い訳ですね、スミマセン。
(『
緑内障をあきらめない エピソード2の2』も後日また・・・)
三愛眼科院長
樫本 大作