皆さん、前回の
『最新型の多焦点眼内レンズを厳しく評価してみる プロローグ』は内容が濃くて長くてごめんなさい。三愛眼科は、
#人生100年時代の『見える』を守るために
#緑内障や糖尿病網膜症など
#症状が出ないために末期まで見逃されがちな慢性疾患
の早期発見・早期治療に力を入れていますが、今回の話題は白内障、しかも
『多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』についてです。来年4月に正式に全国発売となる新型多焦点眼内レンズ『
Synergy®︎』をインプラントした患者様の声をご紹介します。
お話を始める前に重大な訂正が・・・タイトルは『最新型の多焦点眼内レンズを厳しく評価してみる 第1号患者様の声!』とありますが・・・実は・・・第1号ではなく、第4号患者様なんです!ほんとごめんなさい!なぜそうなったかというと、この第4号患者様はご意見ご感想がはっきりしていて、ご自身の見え方を的確に表現できる方でして、面白いお話が聴けたので優先して書かせていただくことにしました。(第1号患者様、せっかく「コラムに書いて良い」と快くご協力くださったのに、ごめんなさい。来年には必ず!)(今回はたくさん謝る回ですね)
さて、前回の
『最新型の多焦点眼内レンズを厳しく評価してみる プロローグ』にも書きましたが、そもそも多焦点眼内レンズをインプラントする際、患者様に知っておいて頂かないといけない副産物として
#夜間の見え方(コントラスト感度)
#変な眩しさ(ハロー・グレア)
が挙げられます。ありがたいことに私が今までに担当した患者様の中で、これらの症状が問題になったことはなかったのですが、第4号患者様は本日まさに『光がボヤッと見える』とハッキリ仰いました。ハラハラしますね。
このコラムを書いている今日は、第4号患者様に『
Synergy®︎』を使用した手術後2日目で、しかもこの方、もう片目は多少の白内障はあるものの良く見えており手術していないので、左右の違いが嘘偽りなくハッキリしているのです。
まだ手術後2日目で『光がボヤッと見える』場合に考えないといけないことはいくつかあります。
#術後炎症が落ち着いていない
#眼内レンズの位置が悪い
#そもそも見当違いの眼内レンズを入れちゃった
#術後で患者様が神経質になっちゃっている
こんなところでしょうか。写真を撮ってみましたので見て下さい。
(写真1)
自慢ですが術後2日目としてはとても綺麗だと思います。眼内レンズも正しい位置にインプラントされているし、良く見えると仰ってるので眼内レンズ度数の間違いでも無い。術後で神経質になっているのは仕方ないし・・・
私『手術していない方の目はどうですか?』
患『こっちはこっちで違う感じでボヤけています』
私(そりゃそうか、視力は良いけど片方の目も多少白内障あるし・・・)
私『どちらがボヤッとしていますか?』
患『どっちもどっちです』
私(ふむ)
皆さん、今このコラムを読んでくださっている時間が夜ならば、外の街灯や信号、あるいはお月さまや星を見上げてみてください。街灯は街灯の形のままくっきりはっきり見えていますか。恐らくそんな人間は地球上に存在しません。個人差はあれど放射状に光を放って見えたり、同じ形のものが2つ3つボヤけて同時に見えているはずです。そもそも人間の目は複雑なので、多少ぼやけていて普通なのです。手術をした目は紛れもなく今までの見え方とは違う見え方をするので、今までと違う感覚を異常と捉えられたのかも。
私『夜間の見え方はどうですか』
患『んー、気にしてなかったです』
というわけで、この日のために奮発して購入した、明るさごとの見え方を診断する機械でテストしてみました。
(写真2)
(写真2左)が手術をした目、(写真2右)が手術をしていない目です。見方が分からないと思いますが、要するに折れ線グラフが、色の濃いゾーンに入っていればOKという意味です。(写真2左)はグラフ全部が色の濃いゾーンに入っているので、明るいところから暗いところまでちゃんと見えているということになります。一方で(写真2右)では右に向うほどグラフが濃いゾーンの下に行ってしまうので、暗いところの見え方が弱いということになります。
#ちょっと待って!(写真2右)だけグラフが2本あるじゃないか!
話が難しくなりすぎるのでできるだけ簡単にお話しします。この奮発した機械は、素直に明るいところと暗いところとの見え方を診断できるだけじゃなく、わざと眩しさを感じさせた状態(対向車のヘッドライトが眩しい時など)での診断もできるので、グラフが2本になるんです。
#ちょっと待って!(写真2左)のグラフが1本しかないのはおかしいじゃないか!
(写真2左)ではグラフが2本とも完全に重なっている、つまり『
Synergy』をインプラントした方の目では、眩しい光が差し込んでいる環境でも見え方が落ちない、ということになるんです!凄くないですか!・・・テレビショッピングならここで拍手喝采でしょうけど、これは私たちの業界用語で“チャンピオンデータ”と言って、最もうまくいったケースに違いなく、他の患者様がどうなのか、これからもきちんと評価しないといけません。それが早期臨床評価施設として三愛眼科が背負っている役割です!
とはいえ、手術をしていない方の目よりも暗いところでの見え方が良いというのはグラフから明らかな事実ですので、『術後ハロー・グレア=術前より見えなくなる』という不安を感じる必要は無いのでは、というのが昔からの私の持論です。少なくとも『ハロー・グレア』があるから日常生活が絶望的になることは無いと思います。
また、この患者様は術後の色合いについても正確に教えて下さいました。患者様が見慣れている持ち物でチェックしたところ、手術した目が(写真3)してない目が(写真4)くらいの色合いだそうです。(スマホで撮影すると実際の色合いよりも少し暗く寒く写るなぁ・・・と私が思っていたら、私の気持ちを見透かしたように患者様も「この写真よりはもう少し暖かい感じです」と仰ったので、確かな情報だと思います。)
(写真3)
(写真4)
ちなみに(写真3)(写真4)で写っているピンクの花をモチーフにした小物編み物は、患者様の手作りで花の部分は直径1.5cmほどです。細かい仕事、これこそ凄くないですか!それを聞いて診察室で大人気なく大声でビックリしてしまいました。
『多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』にピッタリの患者様でした。
最後に第4号患者様の本日の視力をご紹介します。
#遠くを見る時の視力・・・1.5!
#手元を見る時の視力・・・0.9!
手元は0.9しか出てないじゃないか、と不審に思われたあなた、手元視力が0.9もあればインチキ臭い安売り広告の注意書きくらい小さな文字でも読めますのでご安心を。
とにかく第4号患者様、長い長い尋問のような診察にお付き合いくださってありがとうございました。また尋問させて下さい、編み物がより楽しくなると良いですね。
三愛眼科院長
樫本大作