シリーズ『危うく失明、危機一髪!』エピソード4
皆さん、またまたお久しぶりです。ついに私のおサボりも極まりまして、何と2ヶ月ぶりのコラム更新です。ダメですね、ほんとに。言い訳ですが忙しいんです・・・
(じゃあ書くな!)いや、書きます!
さて皆さん、眼科の病気ってどんな症状が出ると思いますか、と聞かれたら何と答えます?
フムフム、そうですよね、「見えにくい」とか「目やにが出る」とかをすぐにイメージされると思います。ところがですね、今回は意外にも皆さんにとても馴染みのある
#頭が痛い
#吐き気がする
という症状がとても危ない目の病気のサインだった、という患者様のお話しをしたいと思います。とは言え「頭が痛く」て「吐き気がする」から眼科に行こうとは思わないですよね、この患者様は同じタイミングで
#急に見えなくなって
#1週間経っても良くならないので
三愛眼科に来られたわけです。先にツッコンでおきますよ、見えなくなったらすぐ来て下さい!!!気を取り直して、この患者様が初めて受診された時、症状のある目の視力はどれだけメガネを合わせても0.1、反対の目は1.0でした。まず症状のある目の断面図を見てみてください。(写真1)続けて正常な人の目の断面図と写真も置いておきます。(写真2、3)
(写真1)
(写真2)
(写真3)
青い矢印が指す部分は『角膜』、と言って眼球の一番表面にある透明な膜です。そして黄色い矢印が指す部分が『虹彩』、と言って光が入る量を調節する通称『茶色目』とか呼ばれる組織です。さらに『角膜』と『虹彩』がぶつかる角にある*印のついている部分は『隅角』、と言って目の内部で作られる特殊な栄養水の排水溝があるところです。(ちなみに☆印の部分は『水晶体』と言います。後で出てきますのでお楽しみに。)
では皆さん、(写真1)の患者様の『隅角』を探してよく見てください。そうです、『角膜』と『虹彩』がピッタンコしてしまってスペースが全然無いのが分かりますよね。先ほど申し上げたようにここは、特殊な栄養水の排水溝ですから、スペースが無いと排水が行われません・・・排水されなくなった栄養水は行き場をなくして目の中にどんどん溜まり、眼圧(目の内部圧力)がどんどん高くなります!!
そしてそして!!!『視神経』という脳と目とを繋ぐ大事なケーブルが内部圧力によって押し潰され・・・手遅れの場合には失明してしまうのです・・・この病気を『急性緑内障』とか『緑内障発作』とか『閉塞隅角緑内障』と呼びます・・・怖い・・・。
(ちょっと待って!先生はいつも・・・)
#人生100年時代の『見える』を守るために
#緑内障や糖尿病網膜症など
#症状が出ないために末期まで見逃されがちな慢性疾患の
#早期発見・早期治療
(緑内障はすぐには症状が出ない慢性疾患と言ってるじゃ無いですか!?)
仰りたいことはごもっとも、『緑内障』にもいろんなタイプがありまして、視神経が押し潰されていって見えなくなる、という原理は同じなのですが、強烈に押し潰されるか、じんわり押し潰されるかで症状の出方が違う、と思ってください。
では、最高視力が(0.1)まで下がってしまったこの患者様は、視神経が潰れちゃってもうダメなのでしょうか。いえ、視神経を観察するとまだ完全には傷んでいませんでした。速やかに『白内障手術』をすれば、眼圧が下がって回復する可能性が高く・・・
(先生!素人だと思っていい加減なことを書いてはダメです!!緑内障を治すのに『白内障手術』?そんな馬鹿げた話、聞いてられませんよ!!!)
その疑問もごもっとも、日常診療の中でよく受ける質問です。ちゃんと説明しますので、落ち着いてよく聞いてくださいね。
そもそもこの患者様の『隅角』がピッタンコしてしまった理由は3つあります。理由をお伝えする前に・・・『白内障』という病気は『虹彩』の後ろにある『水晶体』(写真3☆印)が主に老化が原因で濁ってくる病気です。で、ここが大事!『白内障』が進行すると『水晶体』の厚みが増します・・・さて話は戻りまして3つの理由とは、
- 生まれつき『隅角』が狭い(沖縄県民は多いですよ)
- 『白内障』が進行して、分厚くなった『水晶体』が『虹彩』を持ち上げた
- 『水晶体』を支える筋肉が弱く、『水晶体』がグラグラ揺れている
です。多くの場合、この3つの理由が重なり合って『緑内障発作』が引き起こされます。
はい!休憩でーす。
(写真4)は当院の3階部分の写真です。三愛眼科は3階建でして、ここで手術を行なっています。以前の手術待合室は圧迫感があって申し訳なかったのですが、スタッフたちが一生懸命工夫してくれまして開放感のある雰囲気になってきました。もっと皆さんがリラックスできる空間作りを目指しています。
(写真4)
とにかく善は急げ、ということで早速手術を行いまして、何とかトラブルもなく手術を終えることができました。手術して2日目の写真をお見せします、
(手術後2日目)
あれ?何か違和感ありませんか?おっ、よく気が付きましたね。1週間も『緑内障発作』を我慢していたせいで『虹彩』を動かす筋肉が麻痺してしまい、瞳孔が半開きの状態になっちゃってるんです。もちろん視力にも影響が出ます、ただ今術後2ヶ月になりましたが完全に調整した眼鏡をかけても0.7までしか見えません。(先月までは0.4しか見えてなかったんですよ)
術後の断面図(写真5)を見て下さい、黄色い線でなぞったところが水晶体の代わりになる人工レンズです。すごく薄いですよね、厚みが減ったので隅角が拡がったのが分かると思います。こうなると金輪際『緑内障発作』を起こしません!はぁ、めでたしめでたし・・・
(写真5)
この『緑内障発作』なんですが、頭痛とか吐き気の症状が弱い患者様が多くて、今回の患者様のように症状が出てるのに我慢しておられることもしばしばです。過去には見えなくなっているのに1年間放置していた患者様もいらっしゃいました。(もちろん失明です)
三愛眼科では、おや?と感じた患者様には、たとえ無症状で視力が良くてもこの断面図の検査をお見せして、注意喚起と定期的な検査、あるいは手術の選択肢もお話しするようにしています。よく見えているのに通院するというのは嫌なものです。分かります、分かりますよ皆さんの気持ち。でも通院の足が遠のいてしまい、改めて診察する頃には失明寸前、という患者様にお会いする度に、診察する私たちもとても不幸な気持ちになります。ですので皆さん、
#人生100年時代の『見える』を守るために
#緑内障や糖尿病網膜症など
#症状が出ないために末期まで見逃されがちな慢性疾患の
#早期発見・早期治療
は聞き飽きてきたかもしれませんが、今回の患者様のように
#急に見えなくなって
#1週間経っても良くならない
とか我慢せず、『見えなくなったらすぐ眼科に駆け込む』ということだけは覚えておいて下さいね。次はサボらずに、もっと皆さんの為になる情報を発信したいと思います。では。
三愛眼科院長
樫本大作