シリーズ『多焦点眼内レンズを使用してはいけない人って?』 エピソード0
いやいや急に寒くなりましたねぇ。私が沖縄に移り住んで4回目の秋、内地と比べて10℃近く気温は高いのですが、沖縄の気温で十分寒いと感じるような身体になりました…という前置きをシリーズ後半で伏線回収する(できるかな?)今回のシリーズコラムです。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
『多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』は2020年3月に国が定める先進医療の枠組みから外れ、
#手術治療(水晶体再建術)は『保険診療』
#『多焦点眼内レンズ』の費用は『自己負担』
#という『選定療養』形式を承認された医療行為
となりました。
(うわぁ、いきなり難しい言葉が並んだよぉ。嫌いだ、この先生…)
おっとっと(汗)私も日常使わない単語をたくさん並べてくる大人は好きじゃありません。かと言って噛み砕いて説明するのが難しいのも確かですので、いつも患者様にはこう例えて説明しています。
#かかる費用の仕組みは“虫歯治療”と同じです
#治療行為自体は3割負担(1〜3割)です
#“かぶせ”を金歯にすると別途お金がかかりますよね
#白内障手術における多焦点眼内レンズは、金歯と同じ扱いです
さすがに虫歯治療を経験していない大人はそういませんので、こう説明させていただくと、『8割くらい』の患者様は『何となく』理解してくださいます。(何となく8割かいっ!)
また、皆さんが個人で加入しておられる民間の医療保険をお使いになる場合は要注意です。保険診療として認められている『水晶体再建術(白内障手術の正式名称)』の費用は保険会社が負担してくれると思いますが、『多焦点眼内レンズ』自体の費用は負担してくれません。『先進医療特約』なるものは『多焦点眼内レンズ』費用を負担してくれるものでは無くなっておりますので、お気をつけください。(詳しくは各保険会社にお問い合わせくださいませませ)
写真1
はい、休憩ですー。唐突ですが9月末に院内リフォームを行いました(写真1、2、3)今までよりも明るく、ゆったりした待ち合いになったと好評をいただいております。
写真2
withコロナ時代、待合室での過ごし方がより一層重要になりました。元々凡庸に広かった院内の区画整理をしっかりして、患者様の動線をコンパクトにしつつも、待合室は広々と開放感があって、がうまく実現できたと自負しています。(夜遅くまで一生懸命工事してくださった皆さん、本当にありがとうございました!)色彩豊かな絵画なども、皆さんの心を癒してくれると思います。
写真3
はい、休憩終わりですー。さて、そんなわけで民間医療保険の『先進医療特約』が使えなくなって、高額な治療の仲間入りをした『多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』ですが、自己負担が大きいこともあって、『絶対に見えるようにして欲しい』と患者様の期待も大きくなるのは当たり前です。
ですのでこちらも、本当に多焦点眼内レンズを使用して良い目なのかどうなのか、ということについてはものすごく、ものすごーく慎重にならざるを得ません。だって、『一度きりの手術、絶対に後悔して欲しくない』、が医師の本音ですから。
なので当院では
#弱視(生まれつきどうしたって視力が1.0出ない人)
#他に目の病気がある(緑内障や糖尿病網膜症など)
#片方の目は手術後で、単焦点眼内レンズが入っている
#70歳以上
#高次収差(特殊な乱視)の強い人
などがある患者様には、『多焦点眼内レンズ』の使用をお勧めしてはいません。でもねぇ、視力にコンプレックスがあるからこそ、こだわりたくなる人情も痛いほどよく分かります。何を隠そう私こそ、こだわるタイプなので。ですから『多焦点眼内レンズ』を使用することで術後に後悔する可能性、よほど馴染まなければ単焦点眼内レンズに入れ換えないといけないリスクやデメリットを最初から詳らかにして、それでもやりたいとご希望される患者様の熱意に負けてしまい、一連托生で手術に踏み切ることがあります。私、押しに弱いんですよね。
(押しに弱いって何だよ、危なっかしい先生だなぁ)おっととっとっとっと(汗×2)やみくもに押され弱い訳ではありません。ちゃんと根拠があって押し負けているんですよー。
本来はエピソード1として書き始めたこのコラム、導入だけですっかり長くなってしまいました。読み返しても長ったらしいので、一旦お開きとさせていただきます。次回の『多焦点眼内レンズを使用してはいけない人って? エピソード1』から、私が押し負けて多焦点眼内レンズを使用した患者様のご紹介をいくつかさせていただきますので、お楽しみに?
では一本締め…「皆さん、お手を拝借。よーっ(パン)」
(注)
『多焦点眼内レンズを使用してはいけない人って? エピソード1』に向かう前にこれだけは先に…
#弱視の人
#他に目の病気があり、
しかも重症の人
#高次収差の強い人
だけは絶対に押し負けません!
三愛眼科院長
樫本大作